遺産を相続したときには、受け取ることのできる財産だけでなく、借金や他人の保証人になっている保証債務などの、負債がある場合もあります。 相続した後で、遺産を全て整理してみると結局、負債の方が多いときもあります。これでは、何のために遺産を相続したか、わかりません。そこで、残された財産の範囲内だけで、負債の支払いにあてることを条件として、遺産を相続する制度が「相続限定承認」の制度です。 手続きとしては、家庭裁判所に相続開始を知った日から3カ月以内に、「相続限定承認の家事審判申立書」を提出して、審判を下してもらいます。
①相続人が複数いるときは、全ての相続人の同意が必要です。もし、1人でも限定承認に反対の人がいれば、 この手続きは不可能となります。
②限定承認の手続きを行なう前に、すでに相続放棄した人がいたときは、残り全員の相続人が合意すれば、 限定承認は可能となります。このとき、相続放棄した人は、最初から相続権がなかったものとみなされます。 この場合、他の相続人は遺産を全て相続するか、あるいは相続を放棄するかの、いずれかを選択しなければなりません。
③家庭裁判所で限定承認が認められると、負債があったときでも遺産の範囲内で、処理することができます。
④限定承認が認められた相続人は、相続に関係する全ての人に、その旨伝える必要があります。また、 認められたその日から5日以内に、政府の発行する官報に限定承認の事実を、掲載する義務があります。これを公告といいます。 この公告期間は最低2カ月以上必要で、この期間に誰からも異議申し立てがなければ、限定承認に基づい て遺産の分配が可能になります。